2016年11月3日木曜日

第9回Sapientia会研究会

2016年8月8日(月)、第9回Sapientia会研究会が行なわれ、3名の方に発表をして頂きました。今回は史学専攻の学生のほか、国際関係論専攻や学部三年の方にもご報告いただき、幅広い分野での議論を交わすことができました。各々が他の分野の人間と関わることで、研究をより深められたことと思います。

  以下に報告タイトル及び要旨と、質疑応答の様子を紹介します。ご参加くださった方には内容の再確認として、また今後の Sapientia会研究会に興味のある方には、会の様子を知る一助としていただければ幸いです。

 なお、Sapientia会では、報告会(次回は2016年12月後半を予定)の発表者および会誌『紀尾井論叢』の投稿者を 随時募集しております。専攻に関わらず、意欲ある皆様の研究発表の場をご用意しておりますので、関心のある方はお気軽にsapientiasophiaXgmail.com(Xを@に変換)までご連絡ください。

報告の詳細に関しては記事の折込部分を参照ください。

※11月16日追記
報告いただいた岩田氏の学年が「学部四年」となっておりましたが、正しくは「学部三年」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。



《第1報告》
カルヴァン研究の再検討:「聖遺物について」を中心に
文学部史学科 岩田園

 本報告では卒業論文に向けた中間発表として、宗教改革者ジャン・カルヴァンの著作である「聖遺物について」を通して彼の思想について考察し、今後の研究の方向性を示した。
 まず、聖遺物の定義、中世の民衆や現代のカトリックの聖遺物崇敬の様相を紹介した上で、「聖遺物について」におけるカルヴァンの主張の要旨を確認した。特に、『キリスト教綱要』の「聖遺物」の類似項目と比較を行い、そこには見られない「理性」という言葉が用いられていることに報告者は注目した。「理性」は「信仰」と対となって中世思想上重要視された言葉である。一般的に「神中心」とされるカルヴァンの神学だが、人間の「理性」を重視してもいたのだろうか。
 これらの点を踏まえ、今後は以下のような方向で研究を進めていきたい。まず、カルヴァンの思想上で「信仰/理性」がどのように定義されるのか、また両者の関係はどのようなものかを思想史的背景を考慮しつつ検討する。その問題を遠景としたより小規模な問題として、また相互補完的問題として、カルヴァンの思想のルーツを探りたい。特にカルヴァンの学問遍歴に注目し、パリ大学時代に受けたアリストテレスに基づく伝統的哲学・神学教育による影響が「信仰/理性」の考え方の中に見られるのではないかと報告者は考えている。
 質疑応答では、カルヴァンに対する周囲の改革者たちの影響が指摘され、他のプロテスタントたちの思想との比較を勧められた。また、キリスト教において神の意志に基づく理性を指す「知恵」という言葉の存在を示唆された。カルヴァンの著作の読み込みが今後の大きな課題である。研究を進める上では原語にあたることが必須であると、フランス語やラテン語学習への励ましを頂いた。


岩田氏の報告風景


《第2報告》
戦後西ドイツの学生組織:社会主義ドイツ学生同盟(SDS)研究概観
文学研究科史学専攻博士課程前期 吉澤直貴

吉澤氏の報告風景


《第3報告》
現代日本サブカルチャーにおけるロマン主義の諸相:虚淵玄の場合
グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士課程後期 西島佑

西島氏の報告風景


 上智大学Sapientia会は、同大学院に在籍する学生の相互交流を目的とした横断的研究会です(運営は現在史学専攻による)。研究会誌『紀尾井論叢』の 発刊も行っております(全3号既刊)。今後も活動を継続して参りますので、研究会および雑誌に関心がおあり の方は、sapientiasophiaXgmail.com(Xを@に変換)までご気軽にお問合せください。

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