7月20日(土)、2013年度第1回(通算3回目)のSapientia会研究会が開催され、参加者は13名、史学専攻の院生が2名発表しました。また、今回新たに参加していただいた地球環境学研究科の方々からは、他専攻ならではの鋭いご指摘があり、研究会は大いに盛り上がりを見せました。以下に報告の要旨と、質疑応答の様子を紹介します。
「デンマークのキリスト教化――宣教師の足跡からデンマークの『自立』へ」
石川柊(文学研究科史学専攻博士前期課程)
一体いつからデンマークはヨーロッパの一員となったのか。石川氏の報告は、そのような疑問から出発し、「ヨーロッパ」の重要な文化的要素であったキリスト教に焦点を絞ることによって、中世のデンマーク世界がどのようにキリスト教を受容し、ヨーロッパのキリスト教国家として自他ともに認識するに至ったかを概観した。
石川氏の報告は卒業論文をベースに構成されているが、多様な専攻の方が出席している状況を考慮して、対象時代を長く設定して流れをわかりやすく追えるように、またヴァイキングやルーン石碑といった、色々なトピックを用意するなどの工夫を行った。だがなじみの薄い分野ということもあり、前提となる説明がさらに必要だったようである。
質疑応答では、デンマークに独自の大司教座が設立されたことが、デンマークの自立に直結するのかといった「自立」の概念上の問題、またデンマークを語ることがスカンディナヴィアを語ることになるのかといったテーマの射程の問題が挙げられた。また「ヴァイキング」という集団の性格、およびデンマーク社会を構成する大多数の人々の信仰状況についての質問も提示された。これらは北欧中世史にとって非常に高度な難問であるが、目を背けることのできない課題でもある。
稲生俊輔(文学研究科史学専攻博士前期課程)
ドイツの近代史研究において、第二帝政期の社会と第一次世界大戦、ひいてはナチス政権との連続性を巡る議論は1960年代のフィッシャー論争以来の一大争点であり、その中で極端なナショナリズムを唱える政治団体の存在はつねに一定の役割を与えられてきた。だがそれは、こうした団体を表面的な階級利害の代表としての理解に矮小化してしまった嫌いもあり、近年はその修正が徐々に進みつつある。
質疑応答では、国外の連盟支部に加わった人々はどのようにドイツ性を保持しようとしたのか、また全ドイツ主義の持つ反分権主義について何らかの反発はなかったのか、といった点が指摘された。