2012年12月31日月曜日

上智大学Sapientia会研究会 報告者募集

 上智大学Sapientia会(以下、sapi会)は、上智大学大学院生の学術交流の場です。1年に2回(通常は7月と10月)上智大学でsapi会研究会を開催しており、報告者を随時募集しております。
 以下に注意点を挙げます。


1、報告資格があるのは、上智大学大学院に学籍のある院生、また本学に学籍のある学部生となります。聴講はどなたでも可能です。
 

2、報告の形式や内容は自由です。例えば、様々な分野の学生が参加されますので、興味を持ってもらうような概説的な報告も可能です。また、別の研究会や学会前の腕試しとして、専門的な報告をなさっても結構です。

3、報告時間は1人1時間。目安は、報告30分、質疑応答20分、休憩+α10分など。多少前後しても構いません。

4、プロジェクター、PC等々、必要機材を用意いたします。事前にご連絡ください。

5、開催日時(月日、午前午後の別)は報告者の希望を優先して決定します。

6、研究会の様子は、当ブログ及び学術雑誌『紀尾井論叢』にて掲載されます。報告者は、研究会終了後にsapi会委員に記事を送って下さい。
 


 以上、報告希望の方は、sapientiasophiaXgmail.comまで(「X」を「@」に置き換えて)、遠慮なくご連絡ください。

※上の記事は予告なく変更になる場合があります。ご了承ください。

2012年10月24日水曜日

第2回Sapientia会研究会

  去る10月13日(土)、第2回Sapientia会研究会が開催されました。文学研究科史学専攻、グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻・地域研究専攻、 それぞれの所属学生合わせて11名と前回より少ない参加者となりましたが、第1回に比べて活発な意見の交換が為され、少しづつ合同での研究会にも板に付いてきました。 以下に報告の要旨と、質疑応答の様子を紹介します。


「山座円次郎の対中政策に関する一考察 ―大陸政策の知られざる開拓者―」
 横貝康央(グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士前期課程)

  横貝氏の本報告における目的は、山座の対中政策、主に新政府承認問題をめぐる政策を分析することで、転換期の対中政策を再考察することにあった。辛亥革命 期の日本外交を扱った先行研究はこれまでいくつかあったが、山座に関する研究はほとんどない。「山座の前に山座なく、山座の後に山座なし」と謳われた希代 の外交官は、いったい中国でどのような政策を実行したのか検討された。
 対中政策でイギリスとの協調が崩れていくさなか、山座に駐華公使としての白羽の矢が 立てられる。横貝氏は、『日本外交文書』や外交資料館の史料を用いることで、山座がどのように新政府承認問題に対応していったか考察し、従来指摘されてこ なかった点を明らかにしていきたいとした。 
 質疑応答では、新政府承認問題から対華二十一箇条要求に至る経緯について質問があった。これに対して横貝氏は、山座が国際協調を重視した一方で、山座の後任駐華公使である日置益が列国との協調を無視した点については研究がなされておらず、今後の研究課題としたいと述べた。


「在外カンボジア人コミュニティの日米間比較」
  村田紋菜(グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課程)

在日カンボジア人コミュニティでの仏教行事「ボン・プカー」様子(報告者撮影)
 村田氏は第一回研究会で、在日カンボジア人の文化センター兼仏教寺院建設計画を中心に、彼らにとっての計画の機能を分析した。今回はそれをふまえ、在米カンボジア人と在日カンボジア人のコミュニティ比較を行った。
 「コミュニティの中心となる空間を持つ」という願望は、在住地域を問わず、在外カン ボジア人に共通してみられるものである。しかし、在米カンボジア人コミュニティでは、クメール・タウンの形成と名乗りがある一方、在日カンボジア人は、文 化センター兼仏教寺院の建設計画が存在するにとどまっている現状がある。村田氏は、この2つのコミュニティの比較分析結果として、計画中心人物の背景や、 計画実行団体組織化の有無といった点が日米カンボジアコミュニティ間の大きな差であると述べた。
 質疑応答では、在日カンボジア人と他の在日外国人との違いや定住先決定要因についての質問があり、また在外カンボジア人としての視点だけではなく、在日外国人として在日カンボジア人を捉える重要性などが指摘された。


「ボボリ庭園グロッタ・グランデ、マニエリスム庭園の一例として」
 櫻井麻美(文学研究科史学専攻博士前期課程)

ボボリ庭園グロッタ・グランデ:第一の部屋(失われた楽園の部屋)(報告者撮影)
 櫻井氏はマニエリスム庭園を対象として、16世紀の精神が庭園という半公的半私的空間でいかに表現され、また社会的にどのように受容されていったのかということを研究テーマとしている。
今回の発表では写真を多数用いながら概説的なマニエリスム庭園の解説を行ない、具体例 としてマニエリスム庭園を代表するボボリ庭園のグロッタ・グランデが取り上げられた。ギリシア神話は西洋の庭園に繰り返し登場するモチーフであるが、ボボ リ庭園のグロッタで意図されたのは純粋なギリシア神話の再現ではなく、発注主フランチェスコ・デ・メディチ(Francescode’ Medici)の趣味―錬金術、新プラトン主義、自然科学など―を体現するための舞台としての機能であるとの説が述べられた。
 質疑応答では、庭園に込められた思想は実際に庭園を訪れる同時代の人びとが共通して理解しうるものだったのか、このような寓意表現を内包する庭園は他地域にも見られるのか、マニエリスム期の庭園とキリスト教の関係はどのように説明できるか、などの点が指摘された。

2012年10月10日水曜日

第2回Sapientia会研究会開催のお知らせ

Sapientiaとはラテン語でSophia=上智を意味します。本年度より、新た な試みとして上智大学文学研究科史学専攻、グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻、同研究科地域研究専攻の三専攻により、Sapientia会を 発足しました。その活動の第一弾として、来る1013日(土)、第2回の研究会が開催されます。年間三度の開催を予定しています。
 この研究会は、上智大学内他専攻大学院生との相互交流を深めると共に、他分野の研究 内容やその手法を知ることで、各々が自らの研究を深めることを目的としています。また、この研究会を通じてより広範な知識を得るだけではなく、専門外の 方々にも自らの研究の意義と内容を理解してもらうための創意工夫と努力を重ねることは、大学院生の研究職への就職難が叫ばれる昨今の状況下、ますます必要 とされるであろう、より多くの人へ自身の研究成果をアピールする術を会得するための貴重な機会となると考えています。
 将来的にこの研究会と上智大学大学院生の総合交流の輪がより大きな広がりとなるよう、他専攻所属大学院生や、学部生の参加もお待ちしております。興味のある方は、是非ご参加ください。

 以下、第2回Sapientia会研究会の概要となります。

日時:10 13日(土)1300分~1600
場所:上智大学11号館209教室
題目・報告者:

13:00~
「山座円次郎の対中政策に関する一考察 
                 ―知られざるアジア外交の先駆者―」
                 グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士前期過程 横貝康央
 
14:00~

「在外カンボジア人コミュニティの日米間比較」  
               グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課程  村田紋菜
15:00~
「ボボリ庭園グロッタ・グランデ、マニエリスム庭園の一例として」

                                         文学研究科史学専攻博士前期課程 櫻井麻美

研究会に関してのお問い合わせ、また次回(12月の開催を予定しています)以降の報告希望等は、sapientiasophiaXgmail.comまで(「X」を「@」に置き換えて)ご連絡ください。

                        代表:上智大学大学院文学研究科史学専攻院生会会長 宮古文尋
                                                 (同専攻博士後期課程所属)

2012年7月14日土曜日

第1回Sapientia会研究会

 去る6月30日(土)、第1回Sapientia会研究会が開催されました。日程の決定が直前になったこともあり、文学研究科史学専攻、グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻・地域研究専攻、文学部史学科、それぞれの所属学生合わせて15名と参加者は少数でしたが、それぞれの研究分野を問わない意見の交換が為され、非常に有意義な研究会となりました。 以下に報告の要旨と、質疑応答の様子を紹介します


「日本古代の治水の認識―「治水英雄」創出への過程―」 
  岩井優多(文学研究科史学専攻博士前期課程)

 岩井氏の報告は、日本古代において治水がどう認識されていたかについて、「治水英雄」が創出される過程を中心に考察したものである。その際の重要な問題意識として、「治水英雄」を言説として扱う必要性や、環境史研究の発展、日本古代文化の構築における漢籍の影響が挙げられた。先行研究の整理を踏まえ、四世紀から八世紀後半までを研究対象とし、文献史料だけでなく考古学の資料も参照しながら、国家や僧侶の活動、災害などとの関わりから治水について概観された。
 質疑応答では、言説の持つ多様性をいかに扱うのか、あるいは環境史研究の意義を問う理論的な質問や、史料における治水記事の地域性や漢籍の受容に関する問題、また論文としてどう一貫性を持たせるのかといった全体的な問題など幅広い指摘がなされた。報告者からは、言説の重要性の再確認や気候変動の問題、文献史料と自然科学的データとの整合性について新たに述べられ、報告者の今後の研究の進展を期待させるものとなった。


「過大規模連合の説明モデルに対する批判的考察:マルチ・メソッド・テストを通じて」
  新川匠郎(グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士後期課程)

  政権成立に関する理論は、最小勝利の考え方に依拠して作られてきた。だが、これを超える過大規模連合の政権成立も、稀でない。では、なぜ、これが生じるのか。新川氏の報告では、この問いに答える4つの説明モデルを検証して、その限界と今後の展望について考察された。報告の中では、西ヨーロッパ諸国の事例を用いて、更にその中でも新たな事例を加えることで、モデルの確かさを厳しくテストする内容が課された。また検証の手法でも、定量的な分析と定性的な分析を合わせて用いることで、より厳しいテストの内容が課された。
 以上を踏まえて、一方で限界として、過大規模連合の成立する事例を説明するモデルは未だ十分でないとの点が指摘された。他方で展望として、過大規模連合の類型、それを説明する変数の精緻化、そして、その結果と原因をつなぐ複数の因果経路の可能性が指摘された。
 質疑応答では、①事例の在り方、②仮説の構築、③説明モデルの発展という3つの点で議論が行われた。これらの点は、報告で蔑ろになっていた理論と歴史の関係を再認識させるものであり、今後の研究に向けた報告者の問題意識へつながるものであった。


「在日カンボジア人の現在:文化センター兼仏教寺院建設計画をめぐって」
  村田紋菜(グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課程)

 村田氏の報告では、難民として第三国に移住した在外カンボジア人の視点から、民主カンプチア政権下の宗教実践断絶と、その後の復興が検討された。神奈川県「在日カンボジア人コミュニティ」の文化センター兼仏教寺院建設計画を取り上げ、彼らにとっての上座仏教実践は、クメール文化の象徴であり、コミュニティをまとめる意識的装置であると説明された。
 質疑応答では、在外カンボジア人と彼らの宗教を事例として取り上げる意義の説明が求められ、同時に在日カンボジア人が「クメール文化を有する者」たろうとする現象分析を、宗教実践面のみに依拠するのではなく、他の活動・要素も視野に入れる必要があると指摘された。また、所属専攻を超えた参加があったことで、発表内容に関する議論にとどまらず、「地域研究」の強み・特徴・限界についても言及があり、学際的な意見交換となった。

2012年6月25日月曜日

第1回Sapientia会研究会開催のお知らせ


Sapientiaとはラテン語でSophia=上智を意味します。本年度より、新たな試みとして上智大学文学研究科史学専攻、グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻、同研究科地域研究専攻の三専攻により、Sapientia会を発足しました。その活動の第一弾として、来る630日(土)、第1回の研究会が開催されます。年間三度の開催を予定しています。
 この研究会は、上智大学内他専攻大学院生との相互交流を深めると共に、他分野の研究内容やその手法を知ることで、各々が自らの研究を深めることを目的としています。また、この研究会を通じてより広範な知識を得るだけではなく、専門外の方々にも自らの研究の意義と内容を理解してもらうための創意工夫と努力を重ねることは、大学院生の研究職への就職難が叫ばれる昨今の状況下、ますます必要とされるであろう、より多くの人へ自身の研究成果をアピールする術を会得するための貴重な機会となると考えています。
 将来的にこの研究会と上智大学大学院生の総合交流の輪がより大きな広がりとなるよう、他専攻所属大学院生や、学部生の参加もお待ちしております。興味のある方は、是非ご参加ください。
 
 以下、第1回Sapientia会研究会の概要となります。

日時:630日(土)1000分~1300
場所:上智大学11号館209教室
題目・報告者:

10:00
「日本古代の治水の認識「治水英雄」創出への過程
                       文学研究科史学専攻博士前期課程 岩井優多
11:00

「過大規模連合の説明モデルに対する批判的考察:マルチ・メソッド・テストを通じて」
      グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士後期課程 新川匠郎
12:00

「在日カンボジア人の現在:文化センター兼仏教寺院建設計画をめぐって」
       グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課程  村田紋菜

 研究会に関してのお問い合わせ、また次回(10月の開催を予定しています)以降の報告希望等は、sapientiasophiaXgmail.comまで(「X」を「@」に置き換えて)ご連絡ください。

                            代表:上智大学大学院文学研究科史学専攻院生会会長 宮古文尋
                                                     (同専攻博士後期課程所属)